山や森を好きになる山歩きマニュアル|4歳〜で8kmをラクラク歩いちゃう秘密!
山頂や目的地までたどり着くことは、トレッキングや森歩き、ハイキング等の楽しみの一つです。が、それがすべてではありません。
子どもたちが見ている世界に目を向けてみると、目的地へ行くよりも楽しいことがたくさんあるのだとわかります。
一人ひとりの「やりたい」「気になる」「なんだろう」を大切にすることで、子どもたちは山や森を自由で開放的なフィールドだと感じ、自然と好きになっていきます。
結果として、3歳児や4歳児が8〜10kmを難なく歩き切ることも珍しくないんですよ。
山歩き=辛いけれど頑張るもの、じゃない!
よりかね隊長です。「山に登る」というと、「辛いけれど、頑張るもの」「体力、精神力を鍛えられるアクティビティ」というイメージがあるかもしれませんね。
実は私も、以前はそう思い込んでいて、正直なところ敬遠していました。
もちろんそういうチャレンジの仕方をする人がいるのは事実ですし、体力的に辛い側面は確かにあります。ところが、子どもたちとトレッキングをするようになって、気づいたんです。それって、無数にある向き合い方の一つでしかないんだな、と。
頂上・目的地にたどり着くことを目的にしない
2024年まで私よりかね隊長が活動していた、asobi基地・関東 アウトドア部の「asobi基地やまあるき」シリーズは、世間の一般的な山登り系団体とは違い、“山の頂上にたどり着く” ということを、何よりも重要な目的とはしませんでした。
「頑張れ」「根性だ」「それくらい登れないと男じゃない」などの叱咤激励は一切しません。鼻先ニンジン作戦(お菓子を食べていいからあそこまで頑張ろうとか、登れたらオモチャを買ってあげるとか)で釣ったりもしません。
むしろ、頑張らせようとすればするほど、子どもたちは登らなくなります。それどころか、山というフィールドに苦手意識を持ち、嫌いになっていきます。イヤなのに強要されるわけですから、それはまあ当然ですよね。
4つのルール
じゃあどうするのか。そこで登場するのが、山歩き4つのルールです。
- 子どもの自由な発想や、「やりたい!」をみんなで大切にしよう
- ここでは「ゴールまで歩ききる」「どんぐりをたくさんひろう」「友だちとたっぷりあそぶ」「わざと岩によじ登る」すべてが正解です!
- 頑張らせようとせずに、できたことに目を向けよう
- 子どもに寄り添って、ありのままを受け止めよう
楽しみ方を勝手に決めない=夢中になって遊ぶ
トレッキングというと、安全のために守るべきルールや禁止事項がたくさんあるのが普通です。
しかし、私たちの山歩きでは、幼児連れで問題なく楽しめる難易度の低いコースを選んでいます。せいぜい「迷子にならないように大人と一緒に行動する」「物を投げないで遊ぶ」程度を守れば問題ないようにしています。
そのうえで、ここでは(他ハイカーに迷惑をかけない範囲で)自由なんだよ、好きに遊んでいいんだよ、自分なりに好奇心を発揮してね、というスタンスの共通認識を作っています。
ただ「ゴールまで歩け」と言われれば、そりゃ退屈ですし、「疲れた」「つまらない」「もう嫌だ」というネガティブな気持ちにばかり目が行ってしまいます。子どもは率直なので遠慮なく口にしますし、それを聞いて親のほうもイライラ……という悪循環。
ところが、山や森との向き合い方、楽しみ方を、大人が勝手に決めず、子どもたちそれぞれに委ねれば、子どもたちは夢中になって遊びます。遊んでいるうちにどんどん進み、気がついたら8〜10kmを歩ききっているんです。
「うーん、ちょっと信じられない」「うちの子には無理かも……」
そんなふうに思いましたか?
わかります、私もこの活動を始めるまで、この年齢でこれだけ歩けるとは、まったく思いもしませんでしたから。
これまで多くの家族が不安を抱えつつ参加していますが、誰一人として「歩きたくない」とリタイアした子はいません。それどころか、弱音を吐いてちっとも進まなかったという子すらいません。
3歳、4歳での完走は珍しくありませんし、2歳半で7〜8割を自分の足で歩いた子が二人います。
山や森って楽しい!もっと行きたい!となれば世界が広がる
もともとジョギングが苦手で、疲れるのが嫌いな私・よりかね隊長ですが、近年はトレッキングにとても魅力を感じていて、フィールドを広げています。
理由はいくつかありますが、何よりも声を大にして言いたいのは「山の風景は裏切らない」ということです。どれだけ期待値を高くして行っても(晴れてくれさえすれば)遥かに上回ってくる!!
こんなふうに、人それぞれ、山との向き合い方、楽しみ方は千差万別。大人だってそうなんですから、子どもだって当然、尊重してあげなければいけません。
なにより、夢中になって遊んでいるうちに、山や森の魅力的な部分に目が向くようになっていきます。
その子によって、たくさん生き物がいることかもしれませんし、景色かもしれませんし、アスレチックのように木の根や岩を乗り越えることかもしれません(「疲れた」「つまらない」にばかり囚われる状況だと、こうした余裕も当然生まれないんですよね)。
山や森って楽しい!もっと行きたい!……そうなってくれれば、少しずつ世界が広がり、難易度をあげて本格的な山へも登るようになっていくはずです。
子どもの見守り方|4つのポイント
実際にどのように子どもたちを見守ればいいのか、具体的に紹介していきます。
①できていないことでなく、成し遂げたことに目を向ける
子どもに対して、「もうこれだけ登ったよ。もう少しで●●だね」など、できた事実、成し遂げた成果への、認知をうながす声かけを大切にしています。
「頑張れ」などの叱咤は、原則として使いません。
なぜなら、“まだ頑張りが足りない” と、できていない事実を指摘されているかのような、マイナスのニュアンスとして伝わってしまうケースがあるためです。
私たちasobi基地・関東 アウトドア部では、トレッキングは、辛いことを我慢するためのアクティビティではない、と明確に考えています。
たとえば、
- アスレチック感覚で木の根や岩を乗り越える
- 自分の身体能力の限界に挑戦する
- まだ見ぬ景色を探し求めて進む
- 友人たちと一緒に遊びながら登る
- 小さな虫や、どんぐり、おもしろい形の木の枝や葉っぱで遊びながら歩く
などなど。
トレッキングの魅力・楽しみを、どこに見出すかは、人によって様々。
子どもに対しても、楽しみを見つけるヒントを提供できるような声かけを理想とします。
②子どもの気持ちに寄り添い、ありのままを受け止める
子どもは率直なので、つまらないものはつまらない、辛いものは辛い、と、遠慮なく口にします。
実際、納得いっていないのに歩かされているならつまらないでしょうし、体力的に疲れるのは事実なので、仕方ないですよね。
それと同時に、子どもが「つまらない」「疲れた」「もう嫌だ」などと口にするのは、親に甘えたいだけだったり、心身に安定を得るための手段だったりするケースがあります。
こんなときに拒絶されれば、やる気を失ったり、ヘソを曲げたりして当然です。
親としては、甘えが目について、イライラしてしまうことが多いと思います。ですが、ここは気持ちを切り替えて、子どものネガティブな言葉に「そうだね」と共感し、ただ受け止めてあげましょう。
ときには、ギュッと抱きしめてあげるのも、とてもよい方法です。
また、周囲から大きく遅れてしまうと、ついつい、子どもを急がせようとしてしまいます。
でも、冷静になってみてください。ペースが遅いのは、「真面目に歩かないから」ではなく、子どもが、自分なりの楽しみ方を見つけているからではありませんか?
「ゴールに行かなければならない」と先入観でつい思い込んでしまいますが、子どもが夢中になっているのを止めさせてまで優先すべきことではありません(少なくとも、私たちはそう考えています)。
山やアウトドアを好きになってほしいなら、自分なりの楽しみ方を尊重してあげるところから初めたいですね。山というフィールドが好きになれば、いくらでも歩くようになるし、いくらでも登るようになります。
③鼻先ニンジン作戦はNG! 子ども自らの意志で登ってこそ
自らの意志で山歩きをすることが、何よりも大切です。
「登れたら●●を買ってあげる」「あそこまで行ったらお菓子をあげる」などの鼻先ニンジン作戦はNG事項です。
また、何気なく多用してしまう「あと、もうちょっとだよ」にも注意したいところ。
本当にもう少しで到着するのならいいのですが、そうでないのならフェアではありません。当然、子どもは納得がいきませんので、山に対するマイナスイメージを印象づける結果になります。
辛さばかりが先立って、どうにも山の魅力や楽しさに、目が向かない場合もあります。そういうときは、勇気ある撤退も視野に入れてください。
実社会においては、「失敗しないこと」よりも、「失敗しても何度でも再チャレンジできること」のほうが、重要であるケースは多いもの。
「せっかくここまで来たのに」「もっと歩けるはずなのに」など、親としての様々な思いはあるはずですが、子ども本人の意志・気持ちこそが大切です。
無理やり歩かせようとすれば、「トレッキング=辛いもの」という固定観念を植え付ける結果になり、「もう行きたくない」と言い出す可能性もあります。
④先回りせずに子どもを見守る
普段から間近に子どもたちを見ている私たち親は、ついつい、子どもの限界を勝手に設定してしまったり、「あなたにはまだ早い」と決め付けたりしがちです。
逆に近すぎるからこそ、子どもたちが持つ、本当の力が、見えなくなるのかもしれません。
実際、「こんなに歩けるとは思わなかった」という感想がよく聞かれます。
良かれと思っての先回りをしないで、フラットな目で見守るということを心がけてみてください。
どうにもうまくいかない……と感じる場合は、隊長や他の大人を頼って、子どもから離れて歩いてみるのもおすすめです。
(そのかわり、他の子と歩いてみましょう。自分の子と同じ言動をしていても、まったく感じ方が違う事実に驚くはずです)